not a note
2021-:商品開発
大分市の高山活版社は、同社のもつ技術や特性を活かしたオリジナル商品「NOT A NOTE」の開発を行いました。
同社は1910年に創業した会社です。オフセット印刷や味わいのある活版印刷機による印刷物も手がけ、デザイナーとユニークな取り組みもしています。しかし、主力とする業務用伝票など、BtoBの印刷事業は縮小傾向にあり、今後を見据えた新たな事業を数年前から模索していました。その一環として、東京のクリエイティブ会社ロフトワークなどの外部クリエイターと新たに、デザイン経営を導入。既存事業の整理や全社員によるワークショップを通して、理念や強みを見直していきました。そのプロジェクトメンバーの1人として関わらせていただきました。
商品開発に至ったきっかけは、同じくプロジェクトメンバーで、コピーライターの山村光春さんが、印刷工場を見学したときおもむろに言った、「高山活版社は、業務用文具屋の会社なんだね」という言葉です。同社は、印刷はもちろんですが、例えば伝票は、印刷後に製本し、プロダクトとして完成させるまでを担っています。これまでは、あまり特徴として着目していなかった特徴でした。そこで、自社を「文具屋」と捉え直し、それを体現したBtoCのオリジナル商品をつくることになりました。
「どのような商品が良いだろうか?」
企画会議では、比較的高価格帯でも手に取ってもらえて、同社の技術や生産能力を活かした商品という条件で、マネジメント層や社員の方も含めて意見を出し合いました。そこで、ジャーナリングや旅の思い出をつづるなど、自分自身と向き合う豊かな時間のための高品質なノートというコンセプトが立ち上がりました。開発段階では、現場の職人のような技術者の方々と議論しながら、さまざまな質感や色味の紙で試作をおこない、最終的には手触りの良い特殊紙を使った、白と淡いブルー、ピンク、黄色の4色展開の「NOT A NOTE」が誕生することになったのです。
現在は「NOT A NOTE」の世界観を伝えてくださる、こだわりのある雑貨や作品を取り扱う別府市や大分市の美術館、セレクトショップなどで販売しています。新規事業というと、全く挑戦したことのない分野に踏み出すことをイメージしがちですが、高山活版社では、思考方法も含めて「デザイン」を活用しながら、既存の事業や自社の強みを見いだし、消費者に価値を伝える商品を開発・販売することができました。
撮影:久保 貴史[ELEMENT]
販売サイト https://notanote.theshop.jp/
高山活版社 オフィシャルサイト https://takayama-printinghouse.jp/