anevas

工業用副資材(MRO)を販売する企業の自社商品開発プロジェクトをお手伝いした事例です。

当初は、ロゴ制作のために、経営方針や今後のビジョンについてお話をお聞きしていたのですが、ブランド開発のプロジェクトへと発展しました。

大分市の晃栄産業株式会社は、1948年に創業。家庭用雑貨の荒物・雑貨卸として始まり、鋼材、樹脂材、産業資材などの材料を中心に販売しています。ビジョンとして掲げる「お客様のことを誰よりも思い考える企業を目指す」の言葉通り、工場や工事現場の職人さんたちの要望に応じるうちに、現場で必要なものは何でも取り扱うようになっていったそうです。現在は、資材卸売業と小売業を柱とし、大手ECサイトでの販売にも力を入れています。

プロジェクトは、コーポレートサイトの制作会社からの紹介で、法人ロゴマークをデザインしたことをきっかけに始まりました。長年、漢字表記「晃栄産業」のロゴタイプを使用してきましたが、現在の企業イメージや今後の海外展開も見据え、アルファベットの新たなロゴを作成しました。その際に、社長から「仕入れて販売するだけではなく、自社ブランドを作りたい」というお話をいただき、今回の自社ブランドによるプロダクト開発にも関わらせていただくことになりました。

商品の条件は、工具を収納して持ち運ぶ「ツールバッグ」の開発、これまでにない商品であること、中国にある子会社の工場が持っている技術を活かして製造できるものー。とはいえ、まだまだ“お題”としては範囲が広かったため、現場の方のニーズに応えられる商品は何かをリサーチをしていきました。私が関わっているほかのプロジェクトで、内装工事の現場にいる方を観察したり、意見を聞いてみたり。もちろん他社製品も調べながら、プロダクトのイメージを膨らませていきました。

私自身、ツールバッグのデザインはそれまでしたことがなかったため、専門的な知識のある知人のファッションデザイナーにチームに入ってもらい、素材やサイズなどの仕様、パターン作成といったバッグのデザイン全般をお願いすることにしました。私はクリエイティブディレクターとして、ブランドコンセプトの設計、ライナップの整理、全体のクオリティコントロールや方向性の確認などの役割を担っています。

完成したツールバッグのブランドは、「anevas（アネバス）」といいます。

リサーチでは、現場での使い勝手や工具が探しやすいなどの機能が求められるため、目立つ色使いや頑丈さを優先したデザインのツールバッグを多く見かけました。一方、現場用のバッグも、シンプルなもの、シックなものといったファッション性を求める人も一定数いることがわかりました。また、工事現場やプロユースの商品でありながら、キャンパーやアウトドア愛好家、DIYが好きな方などのライトユーザーの購入者もいます。そのような状況をふまえ、「anevas」は、「機能性とファッション性を兼ね備えた大人のためのツールバッグブランド」をコンセプトにしました。

コンセプトに基づき、色は黒のみの展開。ブランドのタグや刺繍まで黒です。コットン、ポリエステル、メッシュと素材に変化をつけることで、同じ黒でも雰囲気が異なっています。ライト層向けであることも想定し、比較的手の届きやすい価格設定となるようにしました。ファッション性だけではなく、バケツ型で自立する／底面はクロスで補強し、防水仕様／足場にかけるためのフック付／内側にゴミ袋を入れて止められるボタン付など、機能性を高めるための細かい工夫も施しています。
実際の販売フェーズを検討するうえでは、ECサイトでの販売が主軸となることを念頭に、ブランドのイメージやビジュアルづくりに力を入れました。商品写真はもちろんですが、モデルが実際に使用しているイメージも掲載し、ブランドの考え方や実際に使用した際にまとうことができるかっこいい雰囲気なども想像してもらえるようにしました。ツールバッグは、商品写真だけ掲載されているものも多いのですが、こうしたイメージ戦略によって、ブランドイメージを強化するとともに、他社製品にはない魅力を伝えることができました。2024年3月から、Amzonや楽天などでも販売しているので、工具入れやちょっとしたバッグを探している方は、一度ご覧いただけたら嬉しいです。

晃栄産業オフィシャルサイト　 https://kouei-sangyou.co.jp/

楽天市場　https://www.rakuten.co.jp/kouei-sangyou/

Yahoo! 　 https://store.shopping.yahoo.co.jp/kouei-sangyou/

amazon　 https://www.amazon.co.jp/s?me=A22VYGREBM9G0O&marketplaceID=A1VC38T7YXB528

プロダクトデザイン：橋迫 由香［ORNER］

撮影： 矢野 哲義［ヤノテツデザイン］