gomadashi

2024-パッケージ

「ごまだし」とは、日本屈指の漁師町・佐伯市鶴見に伝わる調味料のこと。焼いた魚をたっぷりのゴマと擦り合わせて醤油、みりん、砂糖で味付けしたもので、魚の“出汁”が味わい深く、茹でたうどんに乗せてお湯を注ぐだけで素朴なごちそうができあがります。

そのルーツは100年以上前にさかのぼるとか。鶴見町は、年間約350種類もの魚が集まる豊後水道に面しています。そんな豊かな漁場で、たくさん獲れた魚を余すことなく食べようと、保存食として考えられたのが「ごまだし」だと言われています。中でも、漁村女性グループめばるの皆さんが新鮮な魚を使ってつくり続ける「佐伯ごまだし」は、県内各地のデパートや観光スポットをはじめ、県外でも販売されているロングセラーです。

そんな「佐伯ごまだし」のパッケージリニューアルをお手伝いさせていただきました。

この商品は、すでに年間約6万本を出荷するほど定着した人気があり、文化庁の100年フードにも認定されています。しかし近年は、世代交代をするなどターニングポイントを迎えており、さらなる販路の拡大を目指しています。

実はこれまで、「瓶」を使っていることが販路拡大の壁となっていました。瓶自体のコストが決して安くない上、その重さゆえ輸送コストがかさむのも悩みどころ。バイヤーからの「売り場に置きづらい」という声、そしてユーザーの「短期間で使いきれない」という声にも応えるべく、これらの課題をデザインで解決することになりました。

まずは、「瓶の中身をパウチ2パックに小分けして販売したい」というお題をいただいたので、それをひとまとめにする紙のパッケージへとリニューアルすることに。考えたのは、陳列スペースを有効活用できるスリムな縦長の形状。販売価格に見合うよう、冷蔵に耐える機能と価格の手頃さを兼ね備える最適な用紙を選びました。パッケージの形状はガラリと変わりましたが、従来のロゴをそのまま生かすことで、認知度を損なわないよう配慮しています。

新しいパッケージの完成後、今まで取引のなかったJR大分駅での販売が決まるなど、さっそく販路が拡大。また、丁寧につくられた食品を取り扱う県外のセレクトショップにも採用され、商品の価値を届くべきところに届けるためのサポートができたと実感しています。

そして、クライアントさんにも一定の成果を感じていただけたことから、引き続き、2つの商品パッケージをデザインすることにプロジェクトが発展しました。1つは、一般家庭でもっと気軽に使ってもらえるよう、スパウト容器に変更したもの。もう1つは、ごまだしと乾麺(うどん・そうめん)をセットにしたギフトセットのパッケージです。ギフト用のパッケージには、少し高級感ある用紙を採用しました。

漁村女性グループめばるは、70代のベテランから未来を担う40代の若手へと、代表のバトンが渡されてまだ数年。新しい挑戦が続く中、次はどんなプロジェクトが始まるのか、そこでどんなアイデアを膨らませようかと、今後の展開をとても楽しみにしています。


撮影:脇屋 伸光[ヤナギヤワークス]

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